イチジク(いちじく・無花果)の育て方・栽培方法

イチジクの木

1.イチジクの特徴と栽培ポイント


イチジクの育て方手順に沿って、イチジクを栽培してみましょう!
イチジクは日当たりが良ければ育ちますので、家庭果樹初心者にもおすすめの果樹です

イチジクの栽培データ
■イチジクの栽培難易度:★★☆☆☆
■科名属名:クワ科イチジク属
■分類区分:落葉小高木
■栽培適地:関東以南の太平洋側地域、鉢植えは東北地方が北限
■栽培方法:苗木
■植えつけ:12~3月
■収穫まで:庭植え2~3年、鉢植え2年

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イチジクの特徴

イチジクは、約2500年前から栽培されて、古代エジプトの壁画や旧約聖書にも登場する果樹です。
アダムとイブが、裸身を隠すのにイチジクの葉を使ったことでも知られています。
日本には江戸時代の初めに中国から渡来し、「蓬莱柿」(ほうらいし)という在来種にもなっています。

イチジクは、外側からは花が見えないことから、「無花果」とも呼ばれています。
果樹は2本の木を近くで育てないと結実しないものもありますが、イチジクは1本だけでも結実します。
比較的耐寒性もあるので、関東地方以西では庭植えが可能となっています。
関東地方以北での栽培では耐寒性のある品種を選び、鉢植えで楽しむことができます。
イチジクは、日当たりが良ければ生育旺盛で病害虫の発生も少ないので、家庭栽培初心者にもおすすめの果樹です。

イチジクの品種

イチジクは、果実が成熟する時期によって「夏果専用種」「秋果専用種」「夏秋兼用種」の3つの品種があります。夏果専用種は、6~7月に成熟するため梅雨の影響で果実が腐りやすくなります。家庭栽培では、夏秋兼用種や秋果専用種がおすすめです。

夏秋兼用種

『桝井ドーフィン』:寒さに弱い。代表的な品種で栽培しやすい。
『ホワイトゼノア』:寒さに強い。皮ごと食べられる。
『ブラウン・ターキー』:寒さに強い。低木仕立てで家庭栽培向き。

秋果専用種

『蓬莱柿(ほうらいし)』:寒さに強い。日本で最も古い在来種。
『セレスト』:寒さに強い。ケーキなどにも利用できる。

イチジクの栄養価

イチジクには、ビタミン、食物繊維、ポリフェノール、ミネラルが含まれています。 イチジクにはフィシンと呼ばれるはタンパク質を分解する酵素も含まれており、とても健康に良い食べ物です。

イチジク

イチジク栽培のポイント

・家庭栽培では、夏秋兼用種、秋果専用種がおすすめです。
・品種(夏果、秋果、夏秋兼用)によって、剪定方法を変えます。
・庭植えでは、日当たり、排水、風通しの良い場所を選んで植えます。
・乾燥に弱いので夏場の水切れに注意します。
・生育が旺盛なので、樹高を低く抑えるように仕立てます。
・生長が早いので、肥料不足に注意します。

2.イチジクの栽培基本(庭植え・鉢植え)

肥料

イチジクの栽培は、種をポットまきして育苗してから畑に植え付ける方法と、市販の苗を購入して畑に植え付ける方法があります。家庭菜園初心者の場合は、市販の苗を購入して植え付けることをおすすめします。

イチジクの庭植え

イチジクを庭植えする場合は、12~3月の休眠期に苗木を植え付けます。
関東より北の寒冷地では、寒さが去った3月に植えます。
植え付け場所は、水はけと保水性がよく、日当たりがよくて肥沃な場所を選びます。
イチジクは、弱アルカリ性を好みますので、あらかじめ苦土石灰を撒いて土壌pHを調整します。

イチジクの植え付け時は、直径50㎝、深さ50㎝ほどの穴を掘り、掘り上げた土に腐葉土や堆肥、油かすなどを混ぜ込み、これらの土を半分ほど埋め戻します。苗木は、根鉢をくずして根を広げて据えます。土を埋め戻す際は、根の周りにすき間ができるため、棒などを使ってすき間を埋めます。
接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分が土に埋もれないようにします。

植え付けが終わったら、イチジクの苗木は地際から50~60㎝の高さで切り戻します。
切り戻すことによって、新しい強い枝が伸びてきます。
苗木がしっかりするまでは支柱を立てて、風で倒れないようにひもで固定します。
最後にたっぷりと水やりをします。

イチジクの鉢植え

イチジクを鉢植えで栽培する場合は、12~3月に苗木を植えます。寒冷地では3月に入ってから植え付け、冬は室内に取り込むようにします。
用土は、市販の元肥入りの培養土を利用すると、土づくりの手間が省けます。
鉢底に鉢底石や軽石などを敷いてから培養土を入れます。
用土を自分で作る場合は、赤玉土3、鹿沼土3、腐葉土3、川砂1の割合にし、化成肥料、苦土石灰を混合します。

イチジクを植え付ける鉢は、8号サイズ(口径24㎝)以上が適しています。
根は八方に広げるように据えてから植え付けます。
接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分が土に埋もれないようにします。
用土を入れる際には鉢全部に入れず、ウォータースペースを4~5㎝取ります。
植え付け後の苗木は、地際から20~30㎝程度の高さで切り戻します。
苗木がしっかりするまでは支柱を立てて、風で倒れないようにひもで固定します。
最後にたっぷりと水やりをします。
鉢は、日当たりと風通しがよくて、雨が直接当たらない場所に置きます。

3.イチジクの栽培手入れ(水やり・施肥・追肥・整枝・剪定)

水やり

イチジクの栽培手入れとして、水やり、施肥、追肥、整枝・剪定方法について順番にみていきましょう。

イチジクの水やり

イチジクの水やり方法ですが、
庭植えの場合は、状況を見ながら5日に1回程度水やりをします。
鉢植えの場合は1日1回、夏場は1日2回水やりをします。
イチジクは、葉が大きくて水分が逃げやすいので、特に鉢栽培では乾燥に注意します。

イチジクの施肥

元肥(植え付け時と3月頃)

苗木の植え付け時や、休眠明けの芽が吹きだす前の3月頃に元肥を与えます。
植え付け時の元肥として、溶性リン肥を入れるとよいでしょう。
溶性リン肥は、緩効性タイプの化成肥料で、土の中に長く留まるのでおすすめです。また、アルカリ性肥料のため、土壌pHを高める効果もあります。
イチジクの芽吹きを促進するためには、速効性タイプの化成肥料が効果的です。

追肥(6月頃)

生育期の6月頃に速効性タイプの化成肥料、または緩効性タイプの有機肥料を与えます。
庭植えでは、イチジクの樹冠に沿って株の周りに施すと肥料の効きがよくなります。
鉢栽培では、水やりを兼ねて液体肥料を与えても効果があります。

お礼肥(10月頃)

イチジクの果実を収穫した後の10月頃に、速効性タイプの化成肥料、または緩効性タイプの有機肥料を与えます。
消耗した樹勢を回復させて翌春のための養分を蓄積させます。
イチジクは弱アルカリ性の土壌を好むため、毎年、苦土石灰を施すと生育がよくなります。

イチジクの仕立て方

庭植えの場合

イチジクは生育が旺盛のため、品種にあった仕立て方をして樹高を抑えるようにします。
一文字仕立ては、2本の主枝を左右に伸ばして樹形を横に仕立てていく方法です。
樹高を低く抑えることができるため剪定が簡単で、初心者におすすめの仕立て方です。
なお、一文字仕立ては冬季に枝を切り詰めるため、夏果専用種の仕立てには向きません。

鉢植えの場合

鉢植えの場合は、自然形仕立てにします。
植え付け時は、地際から20~30㎝の高さで切り戻します。2年目の冬に、主枝3本を残して2芽残して
切り戻し、不要な枝は芽かきを行います。

イチジクの実のつき方

・夏果専用種:前年に伸びた枝の先端付近に幼果をつけ、翌年の6月下旬に熟します。
・秋果専用種:その年の春に伸びた新梢に果実がつき、8月下旬に熟します。
・夏秋兼用種:前年に伸びた枝に夏果がつき、その年の春に伸びた新梢に秋果がつきます。

イチジクの整枝・剪定

果実をつけるための樹形づくりを「整枝」といい、そのための枝を切る作業を「剪定」といいます。
冬季剪定は、休眠期の2~3月から行います。
剪定を行うことによって実つきがよくなり、日当たりと風通しもよくなって病害虫の発生も少なくなります。
イチジクは、品種(夏果、秋果、夏秋兼用)によって果実のつき方が異なるため、品種にあった剪定を行うことがポイントです。

・夏果専用種:不要な枝を間引き剪定し、半分程度の枝を残します。残した枝の先端を剪定すると果実がつかなくなるので注意します。
・秋果専用種:枝のつけ根から1~2芽残して前年枝を切り詰めます。
・夏秋兼用種:実を付ける枝を数本残し、それ以外は枝のつけ根から1~2芽残して切り詰めます。
すべての枝を剪定してしまうと、夏果を切り落とすことになるので注意します。

イチジクの人工授粉

イチジクは、苗木1本で実がつくので受粉樹は不要です。人工授粉の必要もありません。

イチジクの摘果

開花してから2~3週間たったら、発育が悪いイチジクや病害虫の被害にあった幼果を摘果します。
収穫する果実の1本あたりの目安は、庭植えでは8~10果、鉢植えでは1~2果にします。
枝先の実は早めに摘果します。

4.イチジクの収穫時期

イチジクの収穫

イチジクの収穫時期をみていきましょう。

イチジクの収穫適期

夏果は6月下旬、秋果は8月下旬から収穫できます。
枝の基部に近い果実から順に熟してきますので、果実の先が割れてきたら収穫します。
果実が雨にあたると裂けたりカビが生えたりするので、夏果専用種はとり遅れないようにします。
収穫のときは、果実をていねいに取り扱うことが大切です。
果実の果梗(果実の軸)から出る白い乳液で皮膚がかゆくなることがあるので、ゴム手袋を使うようにします。
イチジクの果実を早く成熟させたいときは、「オイリング」という方法を使います。果頂部が少し赤くなってきたら、スポイトやストローなどを使って果実の目の部分に植物油(オリーブ油、ゴマ油など)を1~2滴たらすと1週間~10日早く収穫することができます。

5.イチジクに発生しやすい病気と害虫

イチジク畑

イチジクは、病気には強いほうですが、梅雨の時期に白いかびが発生して腐る疫病と、秋の長雨時に発生する黒かび病に注意が必要です。病気にかかった実や葉は、早めに取り除きます。
害虫では、カミキリムシが7~8月頃に発生し、イチジクの幹に穴をあけます。排泄物の出ている穴を見つけ成虫を捕殺します。

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