堆肥の種類・使い方・効果は?

堆肥の種類・使い方・効果は?

1.堆肥とは

「堆肥」は野菜が好む土づくりに欠かせない土壌改良材で、植物などが腐熟した土壌改良材です。
稲わらに牛ふんや、野菜くず、落ち葉などをぜて発酵させて作った有機質肥料で、土壌改良に使われ、肥料としての効果もあります。

野菜づくりに向く土は、水はけ、水もちがよく通気性のある土で、空気を含む粒が集まった「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」です。
堆肥は、土にまぜることで土を団粒構造にし、有機質や有用微生物が、水はけ、水もち、通気性を良くし、土をふかふかにしてくれます。
するなど、元肥だけでなく土嬢改良材としてとても役立ってくれます。

堆肥は、未熟な堆肥を使用した場合、病害虫発生のもとになりますが、完全に熟しているものは材料の元の形をとどめず、においもほとんどありません。
悪臭がする場合は、未熟か水分量が適正でなかったために腐敗した場合に起こります。
家庭菜園で使う場合の堆肥は、完熟堆肥がよいため、使用時は必ず完熟したものを選びましょう。

堆肥は、市販のコンポスター(堆肥づくり容器)を使って、家庭から出る生ゴミや落ち葉などからつくることもできます。

2.堆肥の効果

堆肥には「土をふかふかにする効果」「土の保肥力を高める効果」「土の中の生物を増やす効果」「微量要素と肥料分を供給する」効果があるので、順番に見ていきましょう。

土をふかふかにする効果

堆肥を土に入れると、堆肥に含まれる繊維分が隙間をつくり、腐植が土を団粒化してくれます。
また、堆肥の分土が軽くなり、土の中に隙間もできるため、土がふかふかになり、通気性、保水性、排水性がよくなります。
堆肥には、土をふかふかにする効果あるということを覚えておきましょう。

土の保肥力を高める効果

植物性の堆肥に含まれる繊維分と、堆肥の有機物が分解されてできる腐植には、肥料分を吸着する働きがあります。
そのため、堆肥を土に入れると、土の保肥力が上がります。

土の中の生物を増やす効果

土の中には、生物が住んでいますが、堆肥は土の中のカビ、細菌、放線菌などの土壌微生物やミミズやセンチュウなどの土壌動物の種類と数を増やす効果があります。
堆肥には微生物がついているため、土壌微生物の種類が増え、堆肥の有機物が土の中の生物の餌となって、生物の量が増加します。
また、おたがいが影響し合って、特定の微生物や生物が異常繁殖することが減るため、病害虫の被害も出にくくなるとう特徴があります。

微量ミネラルと肥料分を供給する効果

堆肥には肥料の効果があり、窒素、リン酸、カリウム、マグネシウム、カルシウムや、野菜が必要な微量のミネラルを含んでいます。

堆肥には、微量要素に加え、少量の三要素の肥料分も含まれていますが、含まれる三要素は、化学肥料より少なめです。
三要素とは、窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)で、植物の成長に必要な要素です。
堆肥は、土を植物の生育に適した土壌に改良することで、間接的に植物の生育を助けてくれます。

3.堆肥の種類

堆肥には、主材料の違いで、植物質堆肥と、動物質堆肥に分類されます。

植物質堆肥の主材料は、落ち葉、樹皮、もみ殻、藁、おがくずなど植物質の有機物です。
植物質堆肥は、肥料分は少ないですが、土壌微生物が好んで食べる炭素を多く含むため、高い土作りの効果が望めます。
まだ土壌微生物が少ない新規の畑などに施すのに向いています。

動物質堆肥の主材料は、牛ふん、馬ふん、豚ふん、鶏ふんなどの動物のふんです。
動物のふんは、窒素が多いので、そのままでは腐敗しやすいため、藁、おがくず、籾殻、樹皮などの炭素が豊富な有機物を副資材として使い、堆積し発酵させます。

肥料効果もあり、豚ふん堆肥が一番肥料効果を望めます。次に。牛ふん堆肥、馬ふん堆肥の順で肥料効果が高くなります。

堆肥の種類はこのように色々あります。

肥料成分を含む堆肥は、トマト、ナス、ハクサイ、トウモロコシなどの草丈が大きく、生育期間が長い野菜に向いています。
肥料成分が少ない堆肥は、ニンジン、コマツナ、ホウレンソウなどの草丈が低く、生育が短い野菜に向いています。

代表的な堆肥の種類を順番にご紹介します。

牛ふん堆肥

牛ふん堆肥は、動物質堆肥で、土をふかふかにする効果が期待できます。
肥料効果:★★★☆☆
土作り効果:★★★☆☆

牛ふん堆肥は、牛ふんを発酵させた堆肥で、どのような畑や野菜にも使えます。
おがくずや、藁、もみ殻、おがくどの炭素を多く含む有機物を混ぜたものもあります。牛のエサは草や藁が中心なので、ふんには繊維分が多く含まれます。
繊維分は、土をふかふかにする効果があり、ゆっくりと分解されるため、肥料効果が穏やかに長く続く特徴を持っています。

副資材にワラやもみ殻を使っている牛ふん堆肥がおすすめです。
牛ふん堆肥は、副資材に使われている植物質の有機物のおかげで、高い土づくり効果も得られるバランスのいい堆肥です。

動物質堆肥の中では、肥料成分が比較的少ないため、大量に投入できるので、土が硬い場合や、粘質土の土壌改良に向いています。
副資材におがくずや木質チップを使っていると分解しきれずに未分解のことが多くあります。
おがくずや、木質チップ、藁などの副資材の形が残っている場合は、作付けの1か月ぐらい前に施し、土の中で十分に腐熟させて使います。

未熟な堆肥を畑に入れると、分解の過程で土壌の窒素を奪ったり、土中が酸欠になり微生物の活動を妨げる原因となるため、未熟な状態で使わないように気をつけましょう。

馬ふん堆肥

馬ふん堆肥は、動物質堆肥で、繊維分が多く土壌改良効果が期待できます。
肥料効果:★★☆☆☆
土作り効果:★★★★☆

馬ふん堆肥は、馬ふんに藁、籾殻、樹皮など植物質の副資材を加えて発酵・熟成して堆肥化したものです。
牛ふん堆肥に近いですが、牛ふん堆肥よりも繊維質と土壌微生物が好んで食べる炭素分が多く含まれています。
しかし、肥料成分はやや少なめなので、ボカシ肥料などの有機質肥料と併用します。

馬ふん堆肥は、どんな畑や野菜にも使えます。
また、動物質堆肥の中では、もっとも土づくり効果が高いため、土壌微生物がまだ少ない新規の畑の改良に向いています。
土の中に入れると、繊維分で隙間ができ、土がふかふかになります。
土がふかふかになるため、土が硬く締まった場所や、砂質土、粘質土などの土壌改良にも威力を発揮してくれます。

通気性や保水性、排水性も良くなります。
馬ふん堆肥は、分解がゆっくりなため、効果が長持ちするので、使いやすい堆肥です。

豚ぷん堆肥

豚ぷん堆肥は、動物質堆肥で、肥料分が多く含まれています。
肥料効果:★★★★☆
土作り効果:★★☆☆☆

豚ぷん堆肥は、豚ぷんを堆積、発酵させたものです。
おがくずなどの植物質の副資材を混ぜたものが多いです。

牛ふんよりも土をふかふかにする効果は少なめですが、肥料分が多いのが特徴です。
豚ぷん堆肥は窒素分が多く含まれているため、土づくり効果と肥料効果も望めますが養分が高いので、施しすぎには注意します。
豚ぷん堆肥は、痩せている畑や有機栽培をはじめて行う畑などに向いています。

発酵鶏ふん

発酵鶏ふんは、高い肥料効果が期待できます。
肥料効果:★★★★★
土作り効果:★☆☆☆☆

発酵鶏ふんは、鶏ふんを堆積、発酵させたものです。
窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)の三要素ともに多いため、化学肥料なみの高い肥料効果があります。

発酵鶏ふんは、多少の土壌改良効果はありますが、土をふかふかにする効果は少ないので、すでに土壌改良できている畑に向いています。
化成肥料並に肥料効果が高いので、施しすぎには注意します。

バーク堆肥

バーク堆肥は、植物質堆肥で、土をふかふか効果が長く持続します。
肥料効果:★★☆☆☆
土作り効果:★★★★☆

バーク堆肥は、粉砕した広葉樹や針葉樹の樹皮(バーク)に鶏ふんなどを加えて堆積、発酵させたものです。
繊維質が多く、土がふかふかになり、通気性や保水性、排水性が改善され、土づくり効果が高いのが特徴です。
また、分解がゆっくりで肥料分を保持する力があるので、土の保肥力が高まり効果が長続きします。

バーク堆肥自体には、肥料分はあまり含まれないので、畑ではボカシ肥料などの有機質肥料と併用します。

樹の皮がそのまま混ざっている未熟状態のものは窒素飢餓を起こしやすいので注意しましょう。
未熟なものを施用すると野菜の育ちが悪くなるため、完熟しているものを選びます。
使用する際は、土になじみやすいよう少し湿らせてから使用しましょう。

腐葉土

腐葉土は、植物質堆肥で、土の質の改善に向いています。
肥料効果:★☆☆☆☆
土作り効果:★★★★★

腐葉土は、ケヤキやコナラなどの広葉樹の落ち葉を長期間堆積して発成させた完熟堆肥です。

熟成させた腐葉土は土壤微生物が好んで食べるため、土の中の生物活性が高まり、団粒構造も進み、高い土づくり効果が得られます。

製品によってばらつきはありますが、肥料効果はあまり含まれていないので、ボカシ肥料や米ぬかなどの有機質肥料と併用して野菜栽培をします。
腐葉土は繊維分が多く、保水性、排水性に優れ、保肥力もあるので、土をふかふかにする効果に優れています。

また、ミネラルが多く含まれているので、野菜の食味も良くなります。
腐葉土はどんな野菜や、畑にも使うことができるので使いやすい堆肥です。
特に、土が硬く締まった場所や、砂質土、粘質土などの土壌改良にも向いていま

もみ殻堆肥

もみ殻堆肥は、植物質堆肥で、高い土づくり効果を発揮します。
肥料効果:★★☆☆☆
土作り効果:★★★★☆
もみ殻堆肥は、もみ殻に鶏ふんなど有機物を加え、長期間発酵・熟成させた堆肥です。
もみ殻は殻に隙間があり、とても軽く、土に混ぜ込むと空気の層が増えるので通気性や水はけなどが向上します。

もみ殻堆肥は、野菜・花など何にでも使用できます。
もみ殻堆肥を土に施すと、土壌の生物活性も高まり土の団粒化が進むため、粘土質の畑で使うと土壌改良効果があります。
また、完熟のもみ殻堆肥には保水性があるため、砂質の土の改善にも向いています。

1年ほど熟成させた完熟堆肥を選ぶのが良いでしょう。

雑草堆肥

雑草堆肥は、植物質堆肥で、土の質の改善に向いています。
肥料効果:★★☆☆☆
土作り効果:★★★★☆
雑草堆肥は、簡単に手作りすることができる堆肥です。
刈り取った雑草に、米ぬかなどを加えて、6か月ほど発酵・熟成させた堆肥です。

雑草堆肥は、穏やかな肥料効果があり、ミネラルも豊富なため、野菜の食味も良くなります。
畑に施すと高い土づくり効果が期待できます。

落ち葉堆肥

落ち葉堆肥は、植物質堆肥で、土の質の改善に向いています。
肥料効果:★★☆☆☆
土作り効果:★★★★☆
落ち葉堆肥は、簡単に手作りすることができる堆肥です。
落ち葉堆肥は、落ち葉に米ぬかなどを加えて堆積し、4か月ほどかけて発酵・熟成させた堆肥です。

ナラ、クヌギ、サクラなどの広葉樹の落ち葉を使って作ります。
肥料効果は穏やかに効き、落ち葉堆肥はミネラルが豊富なため、高い土づくり効果も望めます。

4.堆肥の選び方

堆肥はとても種類が多く、同じ種類の堆肥であっても、原料の違いや副資材の有無など内容が異なります。
そのため、どう選べばよいのか迷いがちですが、堆肥の袋に記載の品質表示を見ることで、どんな性質の堆肥なのかがわかりますので、品質表示の見方を抑えておきましょう。

原材料

何が主体の堆肥なのかは、商品名のほかに、原材料名を見ても判断できます。
原材料には「牛ふん」「わら類」「樹皮」など、原材料名が使用された重量の多い順で記載されています。

主な成分の含有量

主な成分の含有量には、三要素の窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)がどのくらい含まれているかがわかります。

窒素(N)

窒素は、不足すると葉色が淡くなって、全体的に黄ばんできます。窒素を施すと、植物の生長を促進し、葉色も濃くなります。

リン酸(P)

リン酸は、不足すると生育が悪くなり、開花や結実数も減ります。リン酸を施すと、開花や結実を促進してくれます。

カリ(K)

カリは、不足すると根の生長が悪くなり、病害虫に対する抵抗力が弱まります。カリを施すと、植物を丈夫に育ててくれます。

炭素窒素比(C/N比)

C/N比は、有機物が含んでいる炭素と窒素の比率で、窒素(N)に対して、どのくらい炭素(C)を含んでいるかをあらわしています。
微生物が分解しやすいかや、窒素飢餓を起こしやすいかどうかを判断する数値でもあります。
発酵済み堆肥で、C/N比が20以上であれば繊維分が多く、土をふかふかにする効果が高いと考えられます。

5.堆肥の使い方

種や、苗を植え付ける1週間以上前までに、土作りを行います。
堆肥や化成肥料を畑に均等にまいて、十分に耕して、土と良くなじませて使います。
土は鍬で耕しても良いですが、鍬で耕すのが大変な場合は、小型の耕うん機などで耕すと便利です。

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